「包丁の捨て時っていつだろう・・・」
いよいよきゅうりしか切れなくなった包丁を見つめながら私は思いました。
夫のお母さんから頂いたこのカタログギフトの包丁。なぜか「赤坂離宮」と書かれてます。
まだ4カ月ほどしか使っていないのに包丁の命と言える「刃」がなくなりました。
大根の皮を剝くと左親指に向かって一直線に刃が向かってくるので、料理するときは「指がなくなる覚悟」が必要です。
頂いたものを捨てるのは心苦しいのですが、指も親から頂いた大事な体の一部。
なんとかならないかと凶器と化した包丁を手に、震えながら料理をする日々送っていました。
包丁研ぎ講座との出会い
そんな時、仙台フォーラスでこんなパンフレットを見つけました。
迫田剛氏による「包丁の研ぎ講座」
「包丁を研ぐ」と言う選択肢が頭になかった私はすぐにこの講座を申し込むことに。
思えば、私のおばあちゃんはよく包丁を研いでいました。そして「トントン!」と気持ちのいい音で料理をしていました。
包丁研ぎは、プロの料理人がすることだと思っていましたが、そんなことはないんですよね。昔から誰もがしていたことなんです。素人でも学べば出来るんです。
何より包丁を研げるのってカッコいい!
「昨日包丁研いでたらさー・・・」って言いたい!
しかも刃物のプロから教えて頂けるなんて機会そうそうないですからね。
このタイミングで講座のことを知ったのにも運命的なものを感じました。
参加費は3000円。定員16名。自宅の包丁(両刃)2本を持参するとのことです。
申し込みはGoogleフォームに必要事項を入力して送信するのですが、「ご記入ありがとうございました」と回答が返ってくるだけで、本当に申し込みが完了したのか不安がありました。
何でも電話で予約をとってきた世代なのでね・・・。
講座へ向かう
当日、開催場所である仙台フォーラス7階のevenへ向かいました。
バッグには包丁が入ってます。うっかりお巡りさんに職質されないよう、いつもより慎重に自転車をこぎます。
「講座」というので教室みたいな所かと思っていましたが、オープンスペースになっており、通りかかる人も足を止めて見ることが出来ます。
私は15分前に着いたのですが、まだ人はあまりいなく、ちょっと不安。
念のためスタッフらしき人に確認すると、場所は合っていて、私の申し込みも無事完了されているとのことでした。
スタートまでの時間、スクリーンで流れていた迫田さんが親子丼を作っている映像を見ることに。
親子丼・・・?
5分前くらいになると続々と参加者が集まってきました。
「全員が包丁を2本持っているんだ・・・」と思うと自然と防衛本能が働きます。
もし殺人事件が起きた場合、ここにいる全員が凶器所持で容疑者リストにのることになるでしょう。
包丁と砥石の講義
開始時間になっても迫田さんは現れません。
「まさか・・・事件??」と、ドキドキしましたがトイレだったようです。
席には研ぎ台がセットされています。
始まりは講義から。包丁を研ぐとはどのようなことなのかを、包丁の仕組みから教えて頂けるのでとても分かりやすかったです。
包丁を研ぐには3種類の砥石が必要だということが意外でした。
片面が「荒砥石」で裏面が「仕上げ砥石」になっている砥石を良く見かけますが、それだと不十分とのことです。
また、電動のシャープナーも便利で人気がありますが、迫田さん曰く、電動の物だと刃が丸くなってしまいすぐに切れ味が落ちてしまうとのことです。
私の家にもありますが、捨てることにします。
包丁を研ぐのは爪を磨くのに似ているなーと思いました。爪も電動よりやすりの方が綺麗に磨けますもんね。
迫田さんはとても楽しい方でした。職人さんって冗談を言わない気難しいイメージがあったので意外です。ちょくちょく記録用のカメラを気にしながら刃物業界の裏事情も教えてくれました。
講義はホワイトボードを使って説明してくれるのですが、学生時代を思い出して懐かしい気持ちになります。メモをとる方もいて、皆さん真剣に講義を受けていました。
迫田さんにとるデモンストレーション
講義の後は迫田さんが包丁を研ぐところを見せてくれます。
一定のスピードとブレない包丁の角度。簡単そうに見えても長年の職人の技が光ります。
コツは、「難しく考えず鼻歌でも歌いながらやればええ」とのことです。
とは言え、相手は刃物。手を滑らせたらケガをするかもしれません。鼻歌のチョイスも慎重に。松任谷由実の「ひこうき雲」が妥当でしょう。
研いだ包丁を砥石ごとに触らせてもらいました。
荒砥石で研いだあとは「バリ」が出て、ザラザラと指にひっかかるような感じですが、中砥石はかなり表面が整った触感です。仕上げ砥石のあとは完全に刃物。
新聞紙もスパッと切れました。
実際に研いでみよう!
いよいよ実践です。
持ってきた包丁を手に、迫田さんの見よう見まねで研いでみるのですが、どうも研いでいる感じがない。バリも出ません。
刃の角度なのか、力の入れ具合なのか。何が良くないのか分からず黙々と研いでいると、あることに気付きました。
「みんな周りの人と話しながら楽しく包丁研いでる」
かたや無言で儀式のごとく一心不乱に包丁を研ぎ続ける私。
いいんです。私は包丁の研ぎ方を習いに来たんです。技を習得出来なきゃお金払った意味がない。おしゃべりで無駄な時間を使いたくないんだ!シャッ!シャッ!!(包丁を研ぐ音)
「どうですか?」
異様な空気を感じたのか迫田さんが様子を見に来てくれました。
私「分かりません!」
まるでコツをつかんだかのように一人黙々と研いでいた私が、まさかの何も分かっていなかったことに迫田さんもビックリの様子。
その後、迫田さんからアドバイスを受け、近くの方とも「バリ出ました?」なんてお話もしつつ和やかに包丁研ぎ講座を終えることが出来ました。
おまけの講座
気づくといつの間にか他の参加者さん達が帰り支度をしていました。
私は研ぐのにすっかり夢中になっていたようです。
まだ研ぎ終わってない包丁が1本ありましたが、仕方ないので急いで仕上げだけ済ませることに。すると迫田さんが様子を見に来てくれました。
迫田さんは「さっきの返しがおもろかった」と、私が中途半端に研いだ包丁を仕上げてくれました。
人間、分からないことは「分からない」とはっきり言うべきですね。
もちろん他の参加者さんの包丁も仕上げてくれてるのですが、私の「赤坂離宮包丁」は少し難しいらしく、今後も研ぎやすくなるよう刃先の角度など調整して頂きました。
その間、講義で聞けなかったことや包丁研ぎのコツもじっくり教えて頂き、気付けば終了予定より30分ほど過ぎていました。
迫田さんに仕上げて頂いた包丁は、私が研いだ包丁と比べるとその違いは一目瞭然。きれいに刃が出来て、食パンが生ハムのように薄くスライス出来ます。
カタログの包丁にここまでのポテンシャルがあったなんて予想外でした。
包丁の購入は専門店に限る!
帰る際に研ぎ石や包丁の購入も出来るのですが、自転車で帰る身分としては重量オーバーということで断念しました。
せめて迫田さんにお礼を!と思ったのですが、販売ブースでお客さんとお話していたので声をかけれずコソコソとエレベーターに向かう非人道的行為をする私。
そんな私に迫田さんが気づき「ありがとうございました!」と声をかけてくれました。お礼を言うべきは私の方なのに・・・本当に素敵な方だと思いました。弟子にして欲しい。
「今後、包丁や砥石を買う際は迫田刃物さんから買おう!」と、心に誓いました。
と言うのも、私の赤坂離宮包丁をはじめ、多くの安価な包丁は長く使うことを想定して作られていないため、研いで使うのには不向きとのことです。一方、専門店で売られている包丁は長く使えるように研ぎやすく刃が出やすい。そもそもの作り方が違うとのことです。
迫田さんの包丁や砥石はHPからも購入可能。私はすでに買うものを決めました。ふふふ・・・
自宅用以外にギフトや名入れもあります!
迫田刃物公式オンラインショップ
Amazonや楽天市場でも砥石の購入が可能です。セット購入だとお得ですし、気軽に始められます。
包丁研ぎ講座を受けてみた感想
「切れなくなったら捨てて新しい包丁を買えばいい」
今まではそう思い、安い包丁を使い捨てしていました。高価な包丁を買って研いで使うよりも効率が良いような気がしていたからです。
しかし、今回の講座を受けそんな考えは無くなり、むしろ・・・
「刃物屋さんに言って店員さんに色々聞きたい」
「誕生日プレゼントは包丁がいい」
「青空の下、包丁を研いだら気持ちいいだろうなー」
と、今まで微塵も考えたことのない発想に。もっともっと刃物について知りたくなりました!
ゆくゆくは刃物職人か、はたまた侍か。
また、講座というものに初めて参加しましたが、もっと一緒の参加者の方とコミュニケーションをとると楽しく学べるなーと思いました。私だけ「資格を取ります!」って意気込みでしたからね。人見知りですが次の機会は頑張ります!
今回の包丁研ぎ講座で教えて頂いた詳しい内容はこちらの記事にまとめております。興味のある方は参考にして下さい。
>>【包丁研ぎ】初心者でも簡単に砥げるようになる!包丁研ぎ講座 (tarocoma.com)
おしまい